はじめに

 初めてのサーキット走行で油温計の見たことも無い上がり方を体験してから、 冷却系の強化を本気で考え始めました。

 冷却系強化といっても、 知識の少ない私が思いつくだけでも、下記3つが考えられます。

  • ラジエーター
  • オイルクーラー
  • インタークーラー

この中でインタークーラーはパワーに結びつく所であり、 エンジンを冷ますという意味合いとは違うので外れて、 残るはラジエーターとオイルクーラーです。
ただ、 両方つける財力なんて単なる末端サラリーマンには持ち得るべくもなく・・・ とりあえず現状把握と情報収集から始めることにしました。

なお、 以下で書いている油温は純正メーター読み値です。 純正メーターは70と150度の値が書かれていて、 その間に3つの目盛りが刻まれています (合計5つの目盛りが刻まれてます)。 その目盛りを参考に、 単純に分割して、下記のように読み替えています。

  • 一番上1つめ:150度(記述値)
  • 上から2つめ:130度
  • 上から3つめ:110度(メータの真ん中)
  • 上から4つめ: 90度
  • 上から5つめ: 70度(記述値:メータの一番下)

情報収集

 まずは情報収集です。
純正ラジエーターの材質ですが、 色々なホームページを聞きかじると 「アルミ」 のようです。
続いて 「対策の順番・組み合わせ」 について、 色々なホームページを読んだりお店に聞いたりしました。 以下にそれをまとめます。

[全体]

  • サーキット走行をすると、油温150度・水温110度まですぐあがる。
  • ラジエーターにしろ、オイルクーラーにしろ、効果は数度程度。
  • あくまで温度上昇を抑える為、要はサーキットで長く全開走行するための物。

[ラジエーターの材質について]

  • 町乗りメインなら、真鍮製のラジエーターが良い。
  • アルミ製のラジエーターは真夏の渋滞でオーバーヒートする可能性あり。
  • 材質は問題ではない、 風が当たらなければ温度は上がる。 100度程度までいけば電動ファンが周るので、 アルミでも風はあたる。

[順番・組み合わせについて]

  • サーキットを走るなら、両方対策が必要。
  • RB系は水温は問題ないが、油温にはとても厳しい。サーキット走るならオイルクーラーは必須!
  • 油温があがっても即エンジンが壊れることは無いが、 水温が上がりすぎると最悪ブロックがゆがむ。

(太字は ラジエーター取り付けを決めたHKS関西さんの御意見です)

現状把握

 続いて現状把握。 油温計はともかく水温計はどういう状況でも微動だにしないので 温度の目安すら分かりません。 初めはDefiのメーターをセットでつけようと考えていましたが・・・ そんなお金があるなら何らかの冷却系強化が図れます。 ということで、 CPUデータ読みですが、 簡易に取り付けが出来るテクトムのCMX-100を取り付けて 水温の状況を把握することにしました。 結果は以下の通りです。

[水温]

  • 60km巡航(2000~2500rpmシフト):約88度(外気温30度弱)
  • 渋滞(2000~2500rpmシフト):約92度(外気温30度弱)
  • 山坂道(?)(3000~4000rpmシフト):約84℃(外気温21度)
  • サーキット(6000~6500rpmシフト):約94℃(春季)

[油温]

  • 町乗りで90~100度
  • サーキットで100~110度

外気温などの条件が微妙に違うので単純比較は出来ませんが、 サーキット走行と渋滞が同じぐらいの温度を示します (クーリング走行をすると88度程度まで下がります)。 噂で聞いた上限値95度 (ノーマルエンジン&CPUでパワーダウンする限界点だそうです) に迫る勢いで、 思いっきりアクセルを踏み込むには不安を感じます。

それに、 現状を把握したのは未だ夏には届かない時期で、 外気温も20~30度という涼しい状態です。 真夏には路面温度は40度を越えるので、 単純に考えると真夏に100度超えは間違いなさそうです。

対策検討~実行

 色々確認した情報を元に、 対策を検討します

 まずは 「対策の組み合わせ(ラジエーター?オイルクーラー?両方?)」 ですが、 これについては

お金が無いのでどれか一つだけ!(;_;)

と、外的要因で強制的に確定です。

続いて、 「ラジエーター」「オイルクーラー」 のどちらを装着するかについてですが、

  • 油温が厳しくても、 あくまで「水冷エンジン」なので、 エンジンを冷ますなら水温を下げる必要あり。
  • オイルクーラーの設置場所はER34だと一般的にラジエータ前であり、 その場合純正ラジエーターだと水温への影響が懸念される。
  • オイルクーラー取り付けにおいては、 アタッチメントの部分でトラブル発生のケースを良く聞く(友人談)。
  • エンジンの制御に影響するのは水温であり油温ではない。
  • HKS関西さんの 「水温上がるとエンジンブロックがゆがむ」 の意見・・・

から、「ラジエーター」に決めました。

あとは、そのラジエータの「材質」についてですが

  • 真鍮・銅製は重い (ただでさえ遅いのに、更にわざわざハンディ背負うことも・・・)
  • 純正が「アルミ」ならば、 それよりも容量の大きい「アルミ3層」なら渋滞云々の心配も無用。
  • HKS関西さんの 「風が当たらなければ材質関係なく温度は上がる」 の意見・・・

から、アルミ3層に決めました。

それから、 1点 「ラジエーターにしろ、オイルクーラーにしろ、効果は数度程度」 という意見が気になり、 どうせ取り付けするならばローテンプサーモもセットに取り付けることにしました (早く冷却すれば、それだけ限界点まで温度の上がる時間が稼げますものね)。

以上の検討を踏まえて・・・

さぁ、やってみよう!

と言うことで、 「アルミ3層ラジエータ(HKS関西)」 +「ローテンプサーモ(NISMO 63度開弁)」 を装着しました。

効果の確認

 さて、 それら冷却系パーツの取り付けを行い、 早速効果の検証です。 取り付けてから様々な条件での走行を繰り返しました。 結果は下記の通りです。

状況 水温 油温 記事
町乗り
(外気温27度)
68~72度 80度 どれほど頑張っても水温80度なんて届きません。
町乗り
(外気温40度)
75~85度 95度 エンジン停止後数分で再始動時、 一時的に水温90度程度になりますが、 そのあとすぐに80台前半まで下がります。
高速
(夜間・雨)
66~72度 80度 下りでアクセル抜くと一気に温度が下がります。
サーキット
(雨・夏季)
78度 100度 30分間私にとっての全開走行です。
サーキット
(晴・夏季)
83度 115度 やはり水温は全然大丈夫。 逆に油温が厳しいですね。

ラジエーター交換により油温が一緒に下がったのは予想外の効果ですが・・・ 見て分かるように、 はっきり言ってオーバークール状態です。 一番酷かったのが、 高速道路 (下り坂) をアクセル抜いて100km/h程度で下っているとき。 ひょっとしたらサーモスタットの開弁温度63度に いっちゃうんじゃないかというぐらい温度が下がりました。 正常な水温 (多分80度台) は渋滞にはまっているときか、 サーキット全開30分したときぐらい・・・ それも雨のサーキットだと80度に届かずと言う状態です。

まぁ、 温度が低いだけで目に見えた実害がなければよかったのですが・・・ この対策後燃費が無茶苦茶悪くなりました。 約20パーセントの悪化で、 通常高速道路で長距離移動すれば10km/lは走っていたのに、 現状だと8km/lまで落ち込む始末です。

はてさて、 ラジエーターが効き過ぎなのか、 ローテンプサーモが悪いのか、 それともどノーマルエンジンにそんな対策をしたこと自体が悪いのか・・・ ただ、 ノーマルのままだとサーキットで水温100度超えは間違いないのですけどね。

結果の解析・再検討

 ここで、 交換前の状態と比較してみることにします。 ラジエーターの効果自体は具体的に何度下がるかと言うのが見えませんが、 交換前後で明確になっているのがローテンプサーモ(冷却開始温度)です。 純正が76.5度開弁に比べてNISMOが63度開弁で、 13.5度の差です。

【注意】
以下の計算は本当に「単純計算」です。 効果なんて外気温などの要因が変われば違うのは当たり前です。
(同じ水温80度でも、外気温が10度違えば下がる温度も変わりまし、 単純に10度の差じゃなくなります、 それに95度を越えれば電動FANが周りますし・・・)
それを無視して計算していますので・・・ そこを考慮のうえ読み進んでくださいね。

状況 対策前水温
(Tpre)
対策後水温
(Taft.all)
町乗り(t30)
(外気温27~30度)
88~92度
[Tpre(t30)]
68~72度
[Taft.all(t30)]

幸いなことに外気温30度前後 (正確には外気温に数度の差が有りますが・・・) のデータが双方あったので、 それで無理やり比較して効果を計算しちゃいます。

 まずは対策の効果から。 これは対策前と対策後の温度差から単純に計算すると

Teff(t30)(対策の効果)=
Tpre(t30)+Taft.all(t30)=88~92度-68~72度=約20度

と想像できます。

ただ、 この効果にはローテンプサーモによる冷却開始温度が含まれてます。 対策前の冷却開始は76.5度(Tsth)、 対策後の冷却開始温度は63度(Tstl)です (全開はそれぞれ10~15度ほど温度が上がったところですが・・・)
この冷却開始温度と、 つりあった前述の対策前後の温度から、 冷却開始から温度がつりあうまでの上昇度合いが想像できます・・・

Trad.nor.eff(純正ラジエーター温度上昇度)=Tpre(t30)-Tsth=11.5~15.5度
Trad.ext.eff(アルミ3層ラジエーター温度上昇度)=Taft.all(t30)-Tstl=5~9度

参考に、 これから純正とアルミ3層の冷却力の差は

Trad.nor-ext.eff(純正-アルミ3層)=
Trad.nor.eff-Trad.ext.eff= 6.5度(約43~58%)

と言う結果が導き出されます・・・ 冒頭で収集した情報である 「ラジエーターなど交換しても数度の差しかない」 というお話は間違いじゃないみたいですね。

これらを元にアルミ3層ラジエーターのみの場合の水温(Taft.rad)を想像してみると

Taft.rad(t30)=Tsth+Trad.ext.eff=81.5~85.5度

おお、まさに理想的な温度に落ち着きますね!
ここまでの計算をまとめてみると・・・ アルミ3層ラジエーター+ローテンプサーモ対策後の水温から アルミ3層ラジエーターのみの水温や純正そのままの場合の水温を計算すると・・・

Taft.rad(x)=Tsth+(Taft.all(x)-Tstl)
Tpre(x)=Taft.rad(x)+Trad.nor-ext.eff
(x=走行条件)

この式を使って、 引き続き真夏の町乗り&夏季サーキット走行の水温を計算してみましょう。

状況 冷却開始
温度
水温 (参考)
純正時水温
町乗り(t40)
(外気温40度)
63度
(Tstl)
75~85度
[Taft.all(t40)]
76.5度
(Tsth)
(1)
[Taft.rad(t40)]
(2)
[Tpre(t40)]
サーキット(sct)
(晴・夏季)
63度
(Tstl)
83度
[Taft.all(sct)]
76.5度
(Tslh)
(3)
[Taft.rad(sct)]
(4)
[Tpre(sct)]

(1)=Taft.rad(t40)=Tsth+(Taft.all(t40)-Tstl)=88.5~98.5度
(2)=Tpre(t40)=Taft.rad(t40)+Trad.nor-ext.eff=95~105度

(3)=Taft.rad(sct)=Tsth+(Taft.all(sct)-Tstl)=96.5度
(4)=Tpre(sct)=Taft.rad(sct)+Trad.nor-ext.eff=103度

この計算結果を元の表に当てはめると下のようになります。(カッコ内の数字は計算値です)

状況 冷却開始
温度
水温 (参考)
純正時水温
町乗り(t40)
(外気温40度)
63度
(Tstl)
75~85度
[Taft.all(t40)]
76.5度
(Tsth)
(88.5~98.5度)
[Taft.rad(t40)]
(95~105度)
[Tpre(t40)]
サーキット(sct)
(晴・夏季)
63度
(Tstl)
83度
[Taft.all(sct)]
76.5度
(Tslh)
(96.5度)
[Taft.rad(sct)]
(103度)
[Tpre(sct)]

実際は町乗り停車中はFANが動作するでしょうし、 温度の高い方が温度低下の幅は大きいはずなので、 実際ここまではあがらないでしょうけど・・・ 補正値としては2~3度のものでは無いでしょうか?

町乗りについては、 私の友人の車が冷却系純正で真夏に100度超えを記録していますし、 計算の結果でも純正で100度超え確実のようですから・・・ まぁ、 サーモスタットを純正に戻してもアルミ3層の効果が多少は期待でき、 エンジンに対する負荷は幾分抑えられそうです

続いてサーキットですが、 対策後の83度というのは真夏のサーキットを殆ど全周全開30分の温度であり、 春の水温94度とは状況が違います (春の水温は1周全開、2周以上クーリング)。 楽観的に考えれば、 サーモスタットを純正に戻しても、 油温無視で全開走行30分でも100度以下に抑えられそうです。

結論

 以上の実行・検討結果から

純正エンジン&初心者のサーキット走行に 「アルミ3層ラジエーター」+「ローテンプサーモ」は行き過ぎ!
「アルミ3層ラジエーター」のみで、真夏のサーキット走行も対応可能!

という結論に行き着きました。 検討中も色々とホームページやお店の人に聞いてみましたが、 オーバークールは燃費に悪影響を及ぼすだけでなく、 エンジンの寿命にも影響を及ぼすようです。 まさに過ぎたるは及ばざるが如しということで・・・ 純正のサーモスタットに戻すが一番と相成りました。

そんなこと言いながらも・・・ BILLIONのサーモスタット(71度開弁)が気になってみたり・・・
ローテンプサーモ(71度開弁)ならば・・・って、 もう計算する気力ないので、 純正に戻して又温度がやばくなったときにでも計算することにします。

それから・・・前述の計算は一番都合の良い結果を載せてます(おいおい・・・)
逆にこの計算が正しいなんて事を教えていただけると助かります。

ガイド
冷却系強化について